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アメリカ人にとってのフロンティアとは? [文化背景]

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「フロンティア(frontier)とアメリカ文明」は、多くの大学が出題しているきわめて重要なテーマです。

実は、アメリカ人とイギリス人では、フロンティアに対するイメージが決定的にちがっています。イギリス人はこのことばを聞くと、ヨーロッパ大陸のいたるところにある『国境』をイメージします。

ところが、アメリカ人にとってのフロンティアとは、ただ1つ、「西部開拓線」です。これは、他国にはない、アメリカだけの歴史的経験です。

つまり、「その一線から東は文明、西は荒野」の境、アメリカの歴史を通じて、つねに西へ西へと動いていった一線です。

17世紀の初め、信仰の自由を求めて、ヨーロッパ大陸から新大陸に最初の白人が入植しました。メイフラワー号に乗ってやってきた彼らは、Pilgrim Fathers『巡礼の父祖』と呼ばれます。いわば、最初のアメリカ人です。

当初、東部の細々とした一線にすぎなかったフロンティアは、すこしずつ西へ広がっていきます。フロンティアが一気に西へ動き始めたのは、19世紀半ばのことです。

西海岸のカリフォルニアで金鉱が見つかり、一攫千金をねらう開拓者が殺到したのです。

NHKで『大草原の小さな家』というドラマが放送されました。1870年代から1880年代にかけての西部開拓時代のある一家(チャールズ・インガルス一家)の物語です。

インガルスさん一家は「パイオニア」、つまり「西部開拓民」です。ウィスコンシン州からカンザス州、ミネソタ州、サウスダコタ州へと移り住み、一家力を合わせてフロンティアを開拓していきます。

チャールズは、愛する妻キャロラインと4人の娘メアリー、ローラ、キャリー、グレイスを、どんな困難からも守ってくれる、強くて頼もしいお父さんです。

キャロラインは、どこまでも優しく聡明なお母さんです。インガルスさん一家は、アメリカ人にとって、なつかしくて涙が出るような「おじいさん、おばあさん」なのですね。日本で言えば、明治の初め。

まさに、「古き良きアメリカ」を描いた「昔話」です。

アメリカ史におけるフロンティアの存在の重要性を初めて主張したのは、F・J・ターナーという歴史家です。アメリカ人は、live on wheels「車輪に乗って生活している」と言われるほど、引っ越しが大好きです。

また、「浪費文化」すなわち「使い捨て文化」も、アメリカ社会の特徴です。ターナーは、「こうしたアメリカ人の特質を形成したのは西に無限に広がるフロンティアだった」と述べました。

アメリカ人が「新しいもの好き」なのも、「発明や工夫」を尊ぶのも、「楽天主義」なのも、すべてフロンティアという他国にはない歴史的経験があったからです。

『開拓者精神』(frontier spirit)というのは、こうしたアメリカ人の国民性の特色の総称です。

フロンティアの開拓が可能であったかぎりにおいて、アメリカ人はそれだけで「民主主義的な」国民であり続けることができました。
永遠に尽きることがないと思われた豊かな自然を前に、「機会と成功の夢」をだれもが平等に手にすることができたのです。

ところが、19世紀の末、フロンティアは西の果て、カリフォルニアにまで到達してしまいます。そして、アメリカの民主主義は行き詰まりました。

ここから、アメリカ文明は、帝国主義的で外部志向的なものへと変質し始めます。国外、つまり他国にフロンティアを求め始めるわけです。

20世紀になり、世界はPax Americana(パクス・アメリカーナ)の時代を迎えます。世界のCoca-Colonization(コカコーラ化)とかMacDonaldization(マクドナルド化)などと呼ばれる、アメリカの世界支配がはじまるのです。



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