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三角ロジックを使いこなそう! [英語長文]

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さて、ここまで三角ロジックの説明をしてきたわけですが、これがそのまま、書かれた英文の基本構造になります。

「1パッセージ=1メッセージ」ということばがあります。パッセージというのは、1つのまとまった英文のことです。

「1パッセージ=1メッセージ」は「どんな英文でも、要するに、イイタイことはたった1つだ」という意味ですが、「その理由は?」となると、だれも納得のいく説明をしてくれないのです。

けれども、みなさんは、もうわかるはずです。筆者は、必ず何か「言いたいこと」があって、英文をつづるのです。

「言いたいこと」=「クレーム」です。クレームがあるということは、必ずデータとワラントがある。クレーム・データ・ワラントは三位一体であり、不可分のトライアングルです。

たとえば、さっきの三角を使って、文章をつくってみましょう。

クレーム:「一年のこの時期にしては、ちょっと暑すぎる」

データ:「26℃だ」

ワラント:「生理学説によれば、24℃を超えたら人は暑いと体感する」


実際にこんな文章を書くことはありえないでしょうが、理屈から言えば、次のようになります。


今日は5月五日のこどもの日だが、この時期にしては暑すぎる。実際、部屋の温度計は26℃をさしているし、朝からクーラーをかけなければならないほどだ。そういえば、大学の図書館で、ハーバード大学のポーリングという生理学者が、「24℃を超えたら、人は暑いと体感するものだ」と述べている本を読んだことがある。

このパッセージは、ただHow and why not?「どのように、なぜ暑いのか?」という論証責任を果たすためだけにつづられたものであり、クレームを除いた残りの部分はデータとワラントだということです。

では、英文がいくつものパラグラフに分かれているのはなぜでしょうか?それも、三角ロジックを使えば、きわめて明快に説明できます。


UFO is real. 「UFOは実存する」

これはもちろん、How and why real?「どのように、なぜ実存するのか?」という論証責任をもったクレームです。これに、Ichiro saw one.「イチローが見た」というデータをあげるとすると、ワラントにはどんな「根拠」が必要でしょうか?「UFOは実存する」というクレームと「イチローが見た」というデータは、どうすればつながりますか?

この場合のワラントは、おそらく1つしかありません。Ichiro is honest.「イチローは正直だ」です。
イチローが嘘つきな人なら、データの信憑性がなくなってしまいますからね。

ずっと以前、この例を使って三角ロジックの説明をしたところ、「英語ネイティブは、バカなのか。『イチローが見たから』なんていう子供だましの理由で、UFOを信じるのか」という、びっくりするような批判をうけたことがあります。(しかも。やっかいないことに、こちらが同じ土俵にたてるはずのない、無責任な匿名の掲示板で)。

もちろん、ちがいます。どんなに陳腐な子供だましの理由でも、「三角ロジックが成り立っているかぎり、その人のクレーム(意見)として、認め、尊重しよう」というのが、「ロジック」=英語ネイティブの「心の習慣」です。

そして、それこそが、本当の「言論の自由」です。
真の民主主義社会において、責任を伴わない自由などありません。「責任」と「自由」は、車の両輪です。
「言論の自由」とは、「論証責任を果たすこと」を条件に、初めて認められるものです。

なんでも思うことを言えばいい、というのではないのです。

「UFOは実存する」という意見を認めたうえで、それでも「UFOなんていない!」と思うのなら、それをロジカルに論証すればいいだけの話です(「どのように、なぜいないのか?」という論証責任を負うことになります)。ディベートは「どちらのクレームが正しいか」ではなく(そもそもそれは主観なのですから不可能で)、論証プロセスの優劣を競うものです。

ちなみに、このUFO is real.の命題と、X saw one. He[she] is honest.の論証は、英語ディベートの入門書に出てくる例題とモデル解答です。けっして僕の都合の良い独創ではありません。

批判することも言論の自由ですから、もしそれが正当(論理的)であるなら、自分を高めてくれるものとして大歓迎します。しかし、こうしたきわめて日本的で見当はずれな批判は、少なくとも英語を扱う際には控えるべきでしょう。



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さて、これで三角ロジックが成立したわけですが、よく見ると、ワラントのIchiro is honest.「イチローは正直だ」に、How and why honest?「どのように、なぜ正直か?」という新しい論証責任が生じてしまっています。
ですから、ここも論証しなければなりません。

クレーム:UFO is real. 「UFOは実在する」

How and why?

データ:Ichiro saw one.「イチローが見た」

ワラント:Ichiro is honest.「イチローは正直だ」

How and why?

こうして第二パラグラフができるのです。もちろん、第2パラグラフのデータやワラントに新しい論証責任が生まれれば、また別にパラグラフをつくって論証しなければなりません。

ときには、1つのパラグラフのなかで複数の論証責任が生じてしまうこともあります。
その場合は、それぞれにパラグラフをつくって、連ねなければなりません。
そして、すべての論証責任を果たして終えて、ようやく英文(パッセージ)は完成するのです。

この論旨であれば、クレーム「UFOは実在する」とデータ「イチローが見た」を第一パラグラフで述べ、ワラント「イチローは正直だ」は、第2パラグラフで独立して扱うことになります。実際に文章を作ってみると、こんな感じです。

最近、UFOの真偽についての議論がかまびすしいが、僕は、本当に存在すると思う。先日、僕の親友であるイチローは、学校からの帰宅途中、聖橋のたもとでUFOを目撃した。彼の話では、西の空にオレンジ色の物体がジグザグに飛行したかと思うと、突然姿を消した。このあたりは飛行機の空路ではないし、けっして鳥や隕石でもなかったと言う。ふだんは冷静沈着なイチローがめずらしく興奮して、僕の携帯に電話をかけてきた。急いで僕も現場に駆けつけ、2人で一時間ばかり待ってみたが、もうその物体が現れることはなかった。

野球部の部長で、高校の生徒会長も務めるイチローは、本当に生真面目な男で、けっしてウソなどつく人間ではない。僕は、高校生になって初めてイチローと知り合ったのだが、彼がウソをつくのを一度も聞いたことがないし、彼の幼なじみの連中は、「イチローは『バカ』がつくほど正直だ」と口をそろえる。そのときのイチローも真剣そのもので、僕は本当に彼がUFOを見たのだと信じている。

わかるでしょうか?これがロジカルな文章です。
三角ロジックの原理を知らずにこの文章を読み、その主旨を問われたら、おそらくほとんどの人が「イチローのUFO目撃談」や「イチローの誠実さ」、あるいは「私の親友イチローについて」などと答えてしまうのではないでしょうか。しかし、それらはいずれも、膨大なデータやワラントに振り回されてしまった間違いです。

ロジカルに書かれた文章では、筆者は、必ず1つのクレームをめぐって講義を展開しています。どれほど長い文章であっても、原理的には1つのクレーム(大きいクレーム)をめぐってつづられています。

それぞれのパラグラフにもクレーム(小さいクレーム)があり、それらは、それぞれに密接な連関をもって、大きいクレームを論証しようとしています。
各パラグラフの小さいクレームが重層的にからみあい、文章全体の大きいクレームを論証しようとしているわけです。

膨大なデータやワラントに振り回されずに英文の論理構造を追っていくことこそが、真にネイティブのように英文を読むということです。やみくもに速く読んだり、「拾い読み」したり、「直読直解」したりすることではないのです。


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